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「リーダーたちの本棚」~経営者、CEOのおすすめ本まとめ

朝日新聞「リーダーたちの本棚」に掲載の書籍を紹介。様々な業界の社長、CEOのおすすめの本。日本トップの経営者に影響を与えた名著
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リーダーたちの本棚Vol.88 遠藤正一 ロングライフホールディング 代表取締役社長のおすすめ本  書評

リーダーたちの本棚Vol.87 経営者のおすすめ本

遠藤正一(えんどう・まさかず)
ロングライフホールディング 代表取締役社長


1955年大阪府生まれ。77年近畿大学法学部卒。79年聖隷福祉事業団入団。86年関西福祉事業社(現・ロングライフホールディング)創業。2002年ジャスダック市場上場。2008年ロングライフホールディングに社名変更。著書に『おもろい人生ここにあり!』(鳥影社)など。

聖書を読み、生きる目的を見つけた

──愛読書は。

 学生時代に「自分は何のために生まれてきたのだろう」と思い悩んでいた時に出会い、心が救われた『聖書』です。今も常に傍らにあります。
 私が「おやじ」と呼び、一生の師と仰ぐ「聖隷福祉事業団」の創設者、長谷川保の半生をつづった『夜もひるのように輝く』も大切な心の書です。







経営者、遠藤正一 ロングライフホールディング 代表取締役社長のオススメ本(書評)

聖書
 高校3年の夏休み、友人と紀伊半島一周の自転車旅行をしました。私は2歳の時に父親を胃がんで亡くし、母が女手一つで4人の子どもを育ててくれました。そんな母に旅費の無心などできません。当然、貧乏旅行。道中の和歌山県串本町で、「重荷を負うて疲れた者は休みて来たれ」という言葉を掲げた教会を見つけ、牧師さんに頼んで泊めてもらいました。この時牧師さんから、「信じる信じないはともかく、聖書を読みなさい。世界の文化文明は聖書が礎なのだから」と言われました。

 大学に入ると、家庭教師のアルバイトを始めました。高校時代からボランティア活動をしていたこともあって、家庭教師の派遣会社から、サポートを必要とする子の担当に指名されました。家庭教師を続けているうち、「この子はなんでこんな苦労をしなければならないんだ」と悩むようになりました。悩みはやがて自分に向かい、「俺は何のために生まれてきたのだろう」と思うようになりました。ふと串本の教会の思い出がよみがえり、「教会に行ったら何とかなるのではないか」と、近所の教会に通い始めました。聖書を読み、牧師の説教を聞くうちに、人生の目的が見えてきました。





夜もひるのように輝く
 大学3年になり、牧師さんから浜松にある社会福祉法人「聖隷福祉事業団」の創設者を紹介されました。その創設者は、行くあてのない貧しい結核患者のために施設を造り、その後、日本初の特別養護老人ホームやホスピスの病院を建設。さらに衆議院議員を7期務め、社会保障制度の確立に尽力しました。私か「おやじ」と呼び、一生の師と仰ぐ長谷川保です。その半生は、著書『夜もひるのように輝く』で読むことができます。私が最初に聖隷福祉事業団を訪ねた時、おやじは玄関で待っていてくれて、私の靴を下駄箱に入れ、スリッパを出してくれました。七十歳を超えた人が、見ず知らずの若造のためにです。その行為に人柄の全てが表れている気がして感動しました。それから老人ホームの中を案内してくれて、「神様が創ってくださったものだよ」と、自分のことは誇らず神様を誇りました。「なんてすごい人や、もっとこの人のことを知りたい、そばで社会福祉について学びたい」と思いました。
 同事業団に入り、7年間おやじの秘書を務めました。おやじは聖書の内容を日々実践していました。無私・無所有の人で、結核病棟だった小屋に住み、掃除もペンキ塗りも花壇の手入れも自分でしていました。「おやじに倣いたい。ただまねをするのではなく、おやじのように今の時代に必要とされていることを見つけ、実践しないといけない」。そんな思いで、介護サービス事業を立ち上げました。





上司が「鬼」とならねば部下は動かず
 日本の高齢者介護の現場を見渡すと、頂点に医師、その下に看護師、次いでヘルパー、クリーンのスタッフというヒエラルキーが今なお厳然とあります。それに対して当社が理想とするのは、リーダーが周囲に尽くす「サーバントーリーダーシップ」です。つまり、頂点にお客様がいて、次に現場のスタッフ、各現場のリーダー、いちばん下に私かいる。その思想と相いれないようでいて多くの共感点があったのが、『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』です。社員を厳しく指導し、礼儀や規律を徹底しなさいという内容です。私は、サーバント・リーダーシップは礼儀や規律があってこそ生きると思うんです。リーダーが率先して動いている時に、「やってくれるんや、楽チンやな」と思うような人は成長できません。礼儀や規律がおろそかになっている風潮を懸念し、本書はあえて厳しいことを書いてくれている気がしました。





夢をかなえるゾウ
 聖書に近い内容を現代風に面白く書いているなと思ったのが、『夢をかなえるゾウ』です。靴磨きや掃除といった日常の心がけの大切さを、変わりたい男と、彼を導く神様・ガネーシャとの愉快な会話を通じて伝えます。思うだけでなく、実践せなあかん、という本書の提言は、私がおやじに学んだことであり、社員たちに期待していることでもあります。





坂の上の雲
 若い社員には、歴史を知ることの大切さも説いています。特に近現代史を学んでほしいと思います。『坂の上の雲』などを読むと、先人たちのおかげで今の自分かあるとわかる。先人に敬意を払える人は、目の前にいる高齢者にも敬意を払える人だと思っています。





引用:朝日新聞リーダーたちの本棚Vol.88




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[ 2018/04/29 09:08 ] リーダーたちの本棚 | TB(0) | CM(0)

リーダーたちの本棚Vol.87 原典之 三井住友海上火災保険 取締役社長のおすすめ本  書評

リーダーたちの本棚Vol.87 経営者のおすすめ本

原 典之(はら・のりゆき)
三井住友海上火災保険 取締役社長


1955年長野県生まれ。1978年東京大学経済学部卒。同年大正海上火災保険(現・三井住友海上)入社。2008年三井住友海上執行役員企業品質管理部長。2010年常務執行役員名古屋企業本部長兼名古屋企業本部損害サポート・イノベーション本部長。専務、副社長を経て、2016年4月から現職。

変化を読めとの指摘を肝に銘じる

──愛読書は。

  ビジネス書では、時代の変化を見据えた企業経営の重要性を説く『ビジョナリー・カンパニー』や『イノベーションのジレンマ』が心に響きました。好きな作家は、司馬遼太郎さん、逢坂剛さんなど。気に入った作家は全作を網羅したいタイプです。




経営者、原典之 三井住友海上火災保険 取締役社長のオススメ本(書評)

ビジョナリー・カンパニー
 初読時よりも思い当たる内容が多かったのが、『ビジョナリー・カンパニー』です。本書に、「時を告げる預言者になるな。時計を作る設計者になれ」という言葉が出てきます。カリスマ経営者であることよりも、長く時を刻み続ける組織、すなわち永続的に繁栄する組織をつくれという指摘です。さらに、基本理念を堅持しつつ、時代の変化を読んで戦略や目標を臨機応変に変えていける組織づくりをせよ、とも説いています。いずれも経営者として肝に銘じておきたいことです。
 当社はこれまでも、時代の新しい動きをとらえた保険商品を開発してきました。最近では、「孤独死」による家主の損害に対応する火災保険特約や、ドローンの事故に対応する保険を開発しました。他にも、再生可能エネルギー事業に関する保険や、iPS細胞などを使う再生医療の臨床研究向け保険など、新たな動きに対応する商品を数多く開発しています。今年4月には、環境変化を見据えた商品の開発や、ICT(情報通信技術)を活用したビジネスモデルの検討を行う組織を新設しました。こうしたこともあって、進歩を促す組織づくりの重要性を説く本書の内容はとても心に響きました。





イノベーションのジレンマ
 技術力や商品力が評価された企業が、ボリュームゾーンの顧客ニーズにとらわれるあまり重要な技術革新を無視し、新規参入企業のイノベーションに席巻されてしまう可能性を指摘しています。優良企業ゆえに失敗するという、逆説的で怖い話です。保険業は技術革新を無視できないビジネスで、例えば、自動運転化か進めば、ドライバー以外にも責任の所在が分散し、従来の自動車保険の枠組みでは対応できなくなります。金融とITを融合した「フィンテック」が進化すれば、金融商品のビジネスモデルが大きく変わる可能性が出てきます。本書も再読した一冊ですが、技術革新の方向性を見極めることの大切さを改めて思い知らされました。





渋沢栄一100の訓言「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵
 ビジネス書ではありませんが、今で言うCSRやコーポレートガバナンスを先取りするような、経営のヒントになる言葉がいくつもありました。著者は、アメリカ育ちの渋沢栄一氏の玄孫さんで、各訓言には英訳が添えてあります。「個人を利すると共に国家社会も利する事業なるや否やを知ること……」(Do you profit? Does the society profit?)「すべての世の中のことは、もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である」(Being satisfied means withering away)などの言葉が心に残っています。洋の東西を問わず共感を呼ぶ訓言ではないでしょうか。






 私は、気に入った作家は全作を網羅したいタイプで、その一人が司馬遼太郎さんです。『峠』を読んだのは、30代半ば。先に上司が読んでいて、主人公・河井継之助の"根回し”が見事だという話に興味を引かれました。読むと確かにそうで、河井は、遊郭の廃止や禄高の改正などに踏み切る前に、うわさを流して人々に心の準備をさせ、藩政改革を推進しました。説明責任が問われる今の時代は通用しない手法かもしれませんが、いきなりのトップダウンではなかった点には学ぶべきものがあります。開明論者であったはずの河井が藩の存続にこだわって滅亡の道を歩んだ経緯なども読み応えがありました。





さらばスペインの日日
 逢坂剛さんも好きな作家です。新刊の発売を心待ちにして読んだのは、『さらばスペインの日日』で最終巻を迎えた「イベリア・シリーズ」。第2次世界大戦の直前から戦後に至るスペインを主な舞台に、各国の秘密情報戦を描きます。フランコ、カナリス提督、須磨弥吉郎といった実在の人物と、主人公を始めとする架空の人物を交えた人間模様がとてもスリリングで、戦時にヨーロッパで起こった様々な出来事への理解も進みました。あとは、「御茶ノ水警察シリーズ」。三井住友海上の本社は神田にあるので、お茶の水や神田界隈の風景や飲食店がたびたび登場する本書を楽しく読みました。





 当社の周辺には、多くの書店があります。最近は忙しくてなかなか自分の時間が取れないのですが、そのうち昼休みなどにふらりと足を向けたいものです。



引用:朝日新聞リーダーたちの本棚Vol.87




[ 2018/04/14 11:32 ] リーダーたちの本棚 | TB(0) | CM(0)

リーダーたちの本棚Vol.86 下平篤雄 日本マクドナルド 代表取締役副社長兼COOのおすすめ本  書評

リーダーたちの本棚Vol.86 経営者のおすすめ本

下平篤雄(しもだいら・あつお)
日本マクドナルドホールディングス 日本マクドナルド 代表取締役副社長兼COO


1953年東京生まれ。76年國学院大学法学部卒。78年日本マクドナルド入社。中央地区本部長、コーポレートリレーション本部長、営業推進本部長などを経て、2005年日本マクドナルド代表取締役。09年大手FC(フランチャイズ・チェーン)のクオリティーフーズ(新潟市)に出向・入社。15年本社に戻り、上席執行役員フィールドオペレーション本部長を経て2015年3月から現職。

良書に背中を押され、職務に邁進した

──愛読書は。

  歴史小説が好きで、吉川英治の『三国志』と司馬遼太郎の『』は二度読みました。『見えざる顧客』は、仕事においてブレイクスルーのきっかけをくれた本です。



 『ビジョナリー・カンパニー(2) 飛躍の法則』は、理想のリーダー像を発見できた本です。私が理想とするリーダー像は、本書に記された「第五水準のリーダーシップ」に集約されます。「自尊心の対象を自分自身にではなく、偉大な企業をつくるという大きな目標に向けている。個人としての極端なほどの謙虚さと、職業人としての意志の強さをあわせ持つ」。そんなリーダーでありたいと思います。






経営者、下平篤雄 日本マクドナルド 代表取締役副社長兼COOのオススメ本(書評)


三国志
 大学時代は、学生運動の余波で学校閉鎖が続き、読書で暇をつぶしました。若者たちの間ではやった、サルトル、マルクス、吉本隆明など、いろいろかじりましたが、親しい先輩から、「哲学書や思想書は実践で役に立たない。歴史を読め」と言われ、『三国志』をすすめられました。群雄割拠の中でどう考え、どう行動すべきか。何か人の一生を左右するのか。確かに実践的な内容です。人間模様も面白く、特に張飛が気に入りました。単純な人物ですが、そこがいい。この大作をきっかけに、歴史小説を読み始めました。






 山岡荘八の『徳川家康』は、評判通り読み応えがありました。そして、司馬遼太郎。一冊を選ぶなら、『峠』です。主人公の河井継之助は、文字を彫るように書き、「おれは、知識という石ころを、心中の炎でもって熔かしているのだ」と言う。自分もそうした気迫を持って生きたいと思いました。封建制度の崩壊を見通しながら、官軍と戦って自藩を滅ぼした河井を批判する人もいますが、長岡藩士としての志を貫き、最後まであきらめなかったその生き方に、私は共感します。





見えざる顧客
 私は、新卒で日本マクドナルドに入社。入社時のオリエンテーションでは、生意気にも「この会社で成功するには、どんな経営書を読めばいいか」と質問しました。すると先輩から、「マクドナルドのシステムをきっちり学べば成長できる。他の勉強は必要ない」と言われました。実際、キャリアを重ねる中で、自然とスキルが身に着き、店舗システム開発やメニュー開発を任されるようになりました。そして、32歳で本社の総務部に配属され、当時の藤田田社長の下で働き始めました。店舗運営に直接関わらなくなったことで、何をもって自分の成果とすればいいのかと悩むようになりました。そこで、新たな視点を求めて書店に足を向け、タイトルに引かれて『見えざる顧客』を手に取りました。実業家の著者は、顧客に対して提供される価値の総体を「真実の瞬間」と名づけ、「真実の瞬間」に直面する従業員一人ひとりが責任あるマネジャーとして働けるシステムを構築することが、サービスの質の向上につながる、と述べています。私かやるべきことはこれだと思い、社内の組織改編に取り組みました。マネジメント職に就いて初めての大仕事で、コミュニケーションのやり方も改善し本社と店舗の意思疎通が進むなど、成果もありました。社内のやり方を覚えたある段階からは、ビジネス書も必要だと感じました。




小さいことにくよくよするな!
 総務部で約10年間働いた後、北関東・東北6県を担当する営業部長に任命されました。管理部門での成功体験があるので、意気揚々と現場に入りました。ところが、売上も人材育成も、満足できる結果が出ない。2年ほど苦しい時期が続き、書店でふと、『小さいことにくよくよするな!』に手が伸びました。元来そうしたタイトルに目が行くようなタイプではないので、余程悩んでいたんでしょう。「人の話は最後まで聞こう」「たいていは相手が正しい」など、書かれているのは当たり前のことですが、大事なことを思い出させてくれました。マクドナルドは、人を尊重するピープル・ビジネス。自分の成果にとらわれて、社内スタッフが仲間であることを忘れていたのではないかと。そう反省してからは、部下や上司からの信頼も向上して現場がうまく回り出し、悩みも消えました。





ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則
 その後、本社業務に戻り、役員を務めて数年、今度はフランチャイズヘの出向が決まりました。社内の中枢で働いていたので、大きな変化でした。人によっては、転職の道を選んだかもしれません。しかし私は、一つの道を貫く河井継之助に触発された人間ですから、大好きなマクドナルド一筋の道を選びました。また、『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』を読んでいたことも大きかったと思います。リーダーとしてどうあるべきか。私の理想は、本書に記された「第五水準のりーダーシップ」に集約されます。「自尊心の対象を自分白身にではなく、偉大な企業をつくるという大きな目標に向けている。個人としての極端なほどの謙虚さと、職業人としての意志の強さを併せ持つ」。こうした文章に触れていたので、謙虚な気持ちでフランチャイズの経営に携わることができました。出向先は、くしくも河井継之助ゆかりの新潟。長岡、小千谷、栃尾など、『峠』の舞台となった土地のマクドナルドに足を運ぶこともありました。フランチャイズの職場では、思いを共有できる仲間に恵まれ、充実した仕事ができました。今の職務において、その経験が糧となっています。





引用:朝日新聞リーダーたちの本棚Vol.86




[ 2018/04/09 22:30 ] リーダーたちの本棚 | TB(0) | CM(0)

リーダーたちの本棚Vol.85 斎藤徹 アウディ ジャパン 代表取締役社長のおすすめ本  書評

リーダーたちの本棚Vol.85 経営者のおすすめ本

斎藤 徹(さいとう・とおる)
アウディ ジャパン 代表取締役社長


1960年東京生まれ。1982年慶應義塾大学経済学部卒。同年日産自動車入社。主に海外事業部門でキャリアを積み、日産ロシア社長、日産ヨーロッパ上級副社長、インフィニティ部門統括執行役員などを歴任。オーテックジャパン代表取締役最高執行責任者(COO)を経て、2015年4月アウディ ジャパン販売代表取締役社長に就任。2016年1月から現職。

読書を通じて駐在国の理解を深めた

──愛読書は。

  好きな作家は、『南海放浪記』を書いた白石一郎や、『坂の上の雲』の司馬遼太郎、『天平の甍』の井上靖など。異国の人や文化に接して学び、成長した人物の物語が好きです。ロシア駐在時には、ロシアを舞台にした『おろしや国酔夢譚』を面白く読みました。登山が趣味なので、山岳や自然に関する名著を文庫化しているヤマケイ文庫をよく読み、特に田部重治の『山と溪谷』を愛読しています。





経営者、斎藤徹 アウディ ジャパン代表取締役社長のオススメ本(書評)


おろしや国酔夢譚
 井上靖の『おろしや国酔夢譚』を読んだのもロシア駐在時。江戸時代にロシアの地に漂着した日本人船員たちの艱難辛苦を描いた物語です。厳しい寒さで衰弱死する者や、ロシア正教の洗礼を受けて現地に帰化する者がいる中で、エカチェリーナ2世との対面を果たし、帰国を実現させた主人公、大黒屋光太夫。その望郷の念と不屈の精神に胸を打たれました。
 ロシアでの職務は、現地法人の立ち上げと、販路の開拓でした。当初の日本人社員は私一人。現地で部下を探すことから始めねばなりませんでした。苦労もありましたが、ロシアの社員は総じて有能で、頼りになりました。おかげで販路は拡大し、年間MVPにあたる社長賞をいただきました。ロシア人の考え方を理解し、現地社員と信頼関係を築けたことが大きかったと思います。




山と渓谷
 高校、大学と、登山部に所属していました。読む本も山に関するものに興味が行き、新田次郎の山岳小説や、アルパインスタイルの草分けとして知られるガストン・レビュフアの『星と嵐』に感銘を受けました。近年は、山岳や自然に関する名著を文庫化しているヤマケイ文庫に親しんでいます。その原点と言える田部重治の『山と渓谷』は、再読して改めて貴重な内容だと感じました。田部さんが登山家として活躍したのは、大正から昭和初期にかけて。まだ観光地化されていない、自然そのままの日本の山々の姿がうかがえます。田部さんは、奥秩父の原生林を愛し、生き生きと描写しました。奥秩父は、東京育ちの私が、奥多摩と並んで親しんだ山々。著者とともに歩いている気分で文字を追いました。登山は今も趣味で、3月の連休には、雪が残る八ヶ岳の赤岳に登りました。責任ある立場ですから、綿密な登山計画を立てます。そのプロセスも含めて、自分の心と向き合えるいい時間です。





言志四録
 佐藤一斎の『言志四録』は、何かの本で「西郷隆盛が座右の書として愛誦した」と書いてあるのを読み、手に取りました。「三学戒」など、箴言が続きます。目に留まったのは、「敬を以てして、以て人を安んじ(敬意が人の心に安定をもたらす)」という一節。ふと「敬挑」という造語を思いつき、アウディの最優秀ディーラーの授賞式で、この言葉を書いた色紙を贈りました。自動車メーカーの成長を支えているのは、お客様に接するディーラーであり、彼らへの敬意こそがアウディ周辺の人々に安定をもたらすと考えたからです。「挑」の字には、上位メーカーにアグレッシブに挑戦する、との思いを込めました。この言葉は社長室にも飾っています。




イノベーションのジレンマ
革新的で顧客の意見に敏感な組織と評価された企業が、その成功体験にとらわれるあまり技術革新を無視し、新たなイノベーションの機会を逃してしまう可能性を指摘しています。自動車産業にもあてはまることで、近年は特に、自動運転や人工知能(AI)の進化、IT企業を中心とする第三勢力の参入など、新たな動きが国内外で見られます。社の遺産が大きいほど、リーダーの先見の明と思い切りの良さが問われる。そんなことを考えさせられた一冊です。





2052今後40年のグローバル予測
 資源の枯渇、環境汚染、生態系の破壊、異常気象などの問題点を提起し、今できることは何かを問う書です。「温暖化によりヨーロッパの勢力は北に移動し、スコットランドは繁栄してイギリスから独立する」といった予測の数々は衝撃的でした。製造業に関わっている以上、環境負荷の問題は無視できません。ましてや自分は、山登りを楽しみ、自然の恩恵を肌で感じてきた人間。戒めとして本書を読みました。




 今の時代は、書店に並ぶ本の入れ替わりが激しい上、情報があまりにも多く、自分に合う本のチョイスが難しい。だからこそ良書との出合いは喜びであり、常に探し続けています。


引用:朝日新聞リーダーたちの本棚Vol.85




[ 2018/03/30 10:02 ] リーダーたちの本棚 | TB(0) | CM(0)

リーダーたちの本棚Vol.84 設楽洋 ビームス 代表取締役社長のおすすめ本  書評

リーダーたちの本棚Vol.84 経営者のおすすめ本

設楽 洋(したら・よう)
ビームス 代表取締役社長


1951年東京生まれ。75年慶應義塾大学経済学部卒。同年電通入社、プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして活躍。76年、同社勤務の傍ら、父親が創業した段ボール製造会社・新光の新規事業としてビームス設立に参加。83年電通退社、ビームス及び新光の専務取締役就任。88年から現職。

和の文化、和の心を、本に求めて

──愛読書は。

  『忘れられた日本人』『手仕事の日本』『日本人と日本文化』『和の菓子』など、日本文化に関する本をあらためて読んでいます。中村天風の『成功の実現』は、読むだけで迷いや弱気が消え、ポジティブな気持ちになれる、心のバイブルです。





経営者、設楽洋 ビームス 代表取締役社長のオススメ本(書評)


忘れられた日本人
 それまでは読書も海外文学が中心でしたが、日本に関する本を読み始めました。『忘れられた日本人』は、民俗学者の宮本常一が、日本各地の辺境の村々を訪れ、村人の暮らしや生きざまを取材した一冊です。権力者やインテリ層が作ったハイカルチャーにはない、奥ゆかしくもパワフルな庶民の営みが描かれていて、時代時代のストリートカルチャーを紹介してきた我が社のルーツを見た気がしました。





手仕事の日本
 ビームスが最初に販売した家具は、北欧のモダン家具でした。現地に赴いて目利きをする中で、日本のデザインの影響を受けた北欧のデザイナーが少なくないことを知りました。日本民藝運動を率いた柳宗悦は、日本と北欧のデザイン交流を担った一人で、焼き物、染め物、金物、木工細工など、日本中の優れた手仕事を紹介する『手仕事の日本』を著しています。当社はオリジナルの服や雑貨も作り、デザインは極めてアメリカ的、あるいはヨーロッパ的ですが、実はメイド・イン・ジャパンの商品も多く、その品質は海外でも高い評価を受けています。今月28日には、民芸品を含むメイド・イン・ジャパンの品や日本をキーワードにしたモノやコトを中心に紹介するセレクトショップを新宿にオープンします。そうした活動においても参考にしている本です。





日本人と日本文化
 司馬遼太郎さんとドナルド・キーンさんの対談本です。2人の会話を読んで日本に対する誇りを感じるとともに、自分の無知を恥じました。外から日本を見てきたキーンさんの指摘は新鮮で、日本人への儒教の影響などについて司馬さんと意見の相違があったりして、大変興味深かったです。ものの真理をついた会話は、経営に関連づけて読むこともできました。例えば、日本文学を「ますらおぶり」と「たおやめぶり」という観点から論じる項では、メンズアイテムからスタートした当社の強み弱みについて考えさせられました。





和の菓子
 ビームスは、世界中のいいモノを集めて紹介するショップで、その役割は、編集者でありプロデューサーです。ただ、私の根っこには、一芸に秀でたクリエーターヘの憧れと、絵画や音楽などをいろいろかじったものの、広く浅くで終わってしまったことへのコンプレックスがあります。せめてクリエーションの現場に近い仕事をと広告会社に入りましたが、本物の芸術や逸品ほど美辞麗句や演出は必要ないと、仕事を通じて感じました。書店に行っても目が行くのは一流のモノ作りに関する本で、ふと『和の菓子』を手に取りました。様々な和菓子のいわれを美しい写真とともに紹介する本です。日本独特の季節感、風流や佗び寂び、和歌や俳句、茶道や華道など、あらゆる世界観を凝縮した和菓子に究極のクリエーションを感じ、ほれぽれと眺めました。





成功の実現
 最後は、中村天風の『成功の実現』を紹介します。華族に生まれ、陸軍の諜報員として中国東北部へ、病を得るとその克服法を求めて世界を流浪、インドでヨガを極めるなど、波乱の人生を歩んだ天風の人生哲学が詰まった書です。仕事でひどく落ち込むことがあった25年ほど前に読み、以来、常に傍らに置いている心のバイブルです。書かれているのは至極当たり前のことですが、読むだけで迷いや弱気が消え、ポジティブな気持ちになれる。悩んでいる友人がいると勧めています。





 元来楽観的な方ですが、そんな私でも「ピンチはチャンス」と思えない時があります。でも、「ピンチはクイズ、どう答えを見つけよう」と面白がるぐらいのプラス思考に転換できれば、解決の道は開ける。そのヒントを探る上で、読書が大きな助けになっています。

引用:朝日新聞リーダーたちの本棚Vol.84




[ 2018/03/23 22:33 ] リーダーたちの本棚 | TB(0) | CM(0)